メンバーと協力し合える関係のつくり方

マネージャーの仕事

“If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together.”
(速く行きたければ一人で行け。遠くへ行きたければみんなで行け。)

この言葉は、アフリカの複数の地域や民族で語り継がれてきたとされ、集団で協力し合うことの大切さや共同体の知恵を象徴する言葉として、現代では世界中で引用されているそうです。

民族が生き残り、発展していくための知恵なんだとおもいます。

また、ピーター・ドラッカーは、マネージャーの仕事を下記のように述べています。

「マネージャーは、自らの資源、特に人的資源のあらゆる強みを発揮させるとともに、あらゆる弱みを消さなければならない、これこそ真の全体を創造する唯一の方法である。」
(『マネジメント 基本と原則』より)

“成果をあげるには、人の強みを生かさなければならない。弱みからは何も生まれない。”
(『経営者の条件』より)

ドラッカーは一貫して「組織やマネジメントの役割は、個々の強みを最大限に活かし、弱みは組織として補完・無力化することにある」と強調しています。

「協力」がキーワード

マネージャーは、自らの資源、特に人的資源のあらゆる強みを発揮させる」とは、組織やチームの中にある人材の強みや得意分野、興味関心を最大限に引き出し、それを活かして成果を上げることにあるという意味です。

ここで重要なのは、どうやって人材の強みや得意分野、興味関心を活かすのか?です。

ぼくは、「上司を含む組織メンバーが協力し合うこと」だと確信しています。

「協力」は、心や力を合わせて物事に取り組むこと、または、二人以上が同じ仕事や目標のために共同で働くことです。力を貸し合い、相互に助け合うニュアンスです。

マネージャーやリーダーがメンバーと協力し合える関係性をつくること、同時にメンバー同士が協力し合える環境(仕組み)づくりが必要です。

ではどうやって協力し合える関係をつくることができるのでしょうか。あなたのチームメンバを想像しながら、以下を読んでいただければと思います。

メンバーはあなたをどう見ている?

あなた(上司・リーダー)は、日々メンバーと会話ややりとりを重ねていますよね。

  • 「おはよう!」「おつかれさま!」と先に声をかけたり
  • 「今週は全社でアンケートがあります。必ず回答してください」と伝えたり
  • 「あの件、進んでる?」と進捗を確認したり
  • 「急ぎの仕事があって、明日までにお願いできる?」と依頼したり
  • メールや電話にすぐ返信することもあれば、
  • 自分の都合を優先して後回しにすることもあるかもしれません。

こうした日々の小さなやりとりの積み重ねが、メンバーのあなたへの印象をつくっていきます。

ここで注意したいのは、あなたの意図がどうであれ、メンバーは“受け取った印象”で判断するということです。

印象は、協力の姿勢を左右する

メンバーがあなたにどんな印象を持っているかは、協力したいと思えるかどうかに直結します。

たとえば、普段からあなたが話しかけやすく、困っているときに親身に寄り添ってくれる人なら、「この人のために力になりたい」と思ってもらいやすくなります。

逆に、そっけない対応が続いていると、「お願いしてもマネージャーは、どうせ聞いてくれない」と思われてしまう。そんな印象をもたれていたら、メンバーはあなたに協力してくれるでしょうか。

あなたがメンバーに協力をお願いしても、主体的に積極的に協力する気になれないんじゃないでしょうか。

上司という立場があるので、やらされ感をもって動いてくれるかもしれません。しかし、このブログは、「チームメンバーを大切に思うリーダー」に向けて書いていますので、ぼくらが目指す姿ではないでしょう。

あなたの一言一言が、メンバーの協力姿勢を育てる土台になっているんです。

先に協力することで、協力される関係ができる

メンバーから相談があったとき、あなたはどう応えていますか。

「ちょっと今は無理」と後回しにしていませんか?
それとも「よし、一緒に考えよう」と手を差し伸べていますか?

困っているときに、上司が寄り添ってくれるその経験の積み重ねが、メンバーの「この人のためなら動こう」という主体性を育てます。

つまり、あなたが先に協力することが、メンバーとの信頼関係と“協力し合えるチーム”をつくるスタート地点になるのです。

協力を育てる「報連相」の場

そんな信頼関係を育てるうえで、役立つのが「報連相(ほうれんそう)」の場です。

報連相とは、「報告・連絡・相談」の略。
仕事の進捗や困りごとを共有しやすくすることで、早めに問題を見つけて一緒に対応できます。

たとえば、私のチームでは毎朝「朝会」を行っています。メンバーがそこで困っていることを話し、それに対して私が先に協力する、ということを日々続けています。

こうした積み重ねが、いざというときに「上司が困っているなら、力になろう」とメンバーの主体的な協力姿勢につながっていきます

上司とメンバーは、組織目標の達成に向かって、一緒に協力していく仲間です。協力し合える関係づくり(=組織開発)を実践してまいりましょう。

主体的な協力姿勢が育っていくと、メンバー同士が助け合うようになっていきます。報連相の場でメンバーが困りごとを話すと、それを聞いた他のメンバーはアドバイスをくれたり、解決に協力してくれたり、代わりに仕事を引き受けてくれるようになります。

この柔軟性のある相互の助け合いは、メンバーが自分たちの組織にどんな印象をもつか、に大きく影響します。「私がいる組織は助け合える組織なんだな、困っていても誰かがちゃんとみてくれているんだな」と安心して仕事ができます。